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愛しい人

2011.11.28 01:52|狼陛下の花嫁 ss

2000hit ありがとうございます(><)

陛下視点です。








(結局、夜が明けてしまったな。)



薄く、淡い光が包み込む。あらゆるものがぼんやりと認識できるか、できないかの日が射し込み始めた部屋の中で。

僕は寝台の縁に立ち、その上で眠る愛しい人をそっと見ていた。




「夕鈴――――…」




静かな部屋で、僕の君を呼ぶ声が少しだけ響く。呼ばれた本人は夢の中のようで、スー、スー、と小さな寝息だけが返ってきた。



(まぁ、当たり前だよね…)



未だ夜が明けたばかりの時刻。
彼女が起きているはずがないとはわかっていたけれど、




(でもさ、)




少しだけ近づいて見た、寝入っている自身の妻の表情が。

至って変わらずほんのり微笑んでいるものだったから、



(…少しくらい、寂しそうにしてくれていたっていいのに)



本物の夫婦となっての、初めて離れ離れとなっていた数日間。地方調査の為に仕方なく、君を置いていった僕はというと、君が恋しくて、狂おしい日々を送っていた訳で。



一日でも早く君のもとへ戻りたい、直ぐ様その柔らかな肌を感じたい一心で、予定より早く終えてきたというのに。


変わらない君に、こちらとしては面白くなくて。つい拗ねている間に寝台の縁にたったまま彼女をみる情態で、いくらか時間が過ぎてしまっていた。




(こんな仕打ちってないよ、夕鈴、)




かといって僕を想い、変わり果てている君をみるのはもっと辛いけれど。


――――…矛盾。




(まぁ、そんな君なんて想像もできないけどね。)




君から僕を欲してくれることなんて、ほとんどなくて。今回しばらく離れ離れになるってことも、やっとの思いで伝えた僕に、



『お仕事なら仕方ないですよ、ね!!それに、離れ離れとはいっても2週間くらいならきっと、あっという間ですよ!!お仕事に追われて、私の事なんて考える暇もなくなるくらい!!』


『でも、ゆ『私もその間、普段時間がなくて出来ないいままだった所でも掃除しましょうかねぇ~。陛下が地方までお仕事しに行くというのに、私も遊んではいられないですし!!』



頑張って下さいね!!あ、でも無理はしちゃいけませんよ~、とそれはそれは物凄い勢いで笑いながら言うものだから僕はなにも言えなくなって。


せめて離れなければならない寂しさを、埋めようと押し倒そうとした僕を、



『だ、だだだだめですよ!!明日にはここを発つんですから、今日はゆっくりと休んで下さいっ!!』




とぱしっ、と手を払い、ふいっ、と背を向けてねてしまった。



君らしい、けれど予想外な展開。僕はただただそんな君に圧倒されて、その背を見るしかできなかった――――…


なんて、そんな苦い出発前夜を思い出して更に、気分が沈む。



本当は焦がれた君を直ぐにでも抱きしめて。頬をそめ恥ずかしがり、逃れようとなにか言うその声を聞きながらも封じ、口づけて、今度は色を帯びた声と共に君を感じながらすごそうと思っていたのに。




思いの外、帰途に時間がかかり朝方になってしまって君は寝ているし。

…寂しそうでもないし。




そう思っていたらなんだかこのまま君を見ているだけなのが馬鹿馬鹿しくなってきて。



(我慢も限界だしね。)



落ち込んでいるよりも、君に触れた方がこの疲れも、この気持ちも満たされると思い込む。

起きるのには少し早いけれど、久しぶりの再開。それに、君が僕を寂しくさせるから。



ぎしり、
彼女の顔のすぐそばに手を置く。


少し覆い被さるような体制で、彼女に口づける、その瞬間。


薄暗い中で突然、ぼー、っとした彼女の目とあった。




(起きた、…?)



少しだけ距離を空け、君の様子を伺う。
目と目が合うだけの時間が少しだけあって。彼女は本格的には起きていない、というより寝ぼけている事に気がついた。



なら本格的に起きてもらおうかな、と思った時。




スッ、
君が動くのを感じた。

薄暗さに慣れた目で彼女を再び離れて見る、



何かを求めるように広げられた両腕。
ふわり、とそれは幸せそうに微笑んでいる君がいた。



「夕鈴――――…」




そんな君に吸い寄せられるように、その白く細い腕に捕らわれる。僕の好きな優しくて、甘い薫りがした。



(あれ?)



久しぶりの君の体温に微睡んでいると、何か毛布に似ているけれど、明らかにそれにしては小さい布が彼女の上に被さっているのに気づく。



名残惜しいけれど、寝ぼけている君の腕から抜けてそれを見て、


その瞬間、ぼっ、と顔の温度が上がるのを感じた。



(君って―――――…)



赤く染まる顔を片手で覆う。君が見れない。

暖かい、けれど切ない想いがめぐって、溢れて。



愛しい。


君が。
どうしようもなく、愛しい。




君は恥ずかしがって、僕を素直には求めてはくれないけれど、そんな君にじれったくなったり、少しだけ不安になることもあったりしたけれど。




(やっぱり、そんな君が好きだ。)



そんな想いが溢れて、僕の上衣を自身の胸に置いている君に、一度だけ口づけた。



帰ると僕を求める腕と笑み、そして妻が一晩中自身に寄せていたその上衣。

たったそれだけ、けれど僕にとっては嬉しくてたまらないよ。



誰かを求めたのは初めてで。
その求めた相手から同じ想いが返ってくる幸福も、初めて知った。



(今日はこれで、我慢しようかな。)



普段寝るときのように、寝台の彼女の隣へ横になる。再び瞼を閉じ、眠りについた妻に手を伸ばして、体ごとこちらへ向かせた。

そして引き寄せ、強く、けれど起こさないように気をつけて抱き締める。



また、ふわりと彼女が先程より増して、幸せそうに微笑んだ気がした。




(起きたら覚悟してね。夕鈴。)




自身の腕のなかに彼女の体温、彼女の薫りを感じながら、幸せな眠りに僕も落ちていった。












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テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学

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