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愛しい人

2011.11.28 02:00|狼陛下の花嫁 ss

2000hit ありがとうございます(><)

夕鈴視点です。






(え、えええ、っ!?)




眠りが浅くなり、意識がぼんやり戻ってきたその時に。寝たときにはなかった異変に気がついてぱっ、と目が覚めうろたえる。



(な、なんで陛下がここに!?)



今日はいつだったかと覚めてはっきりとしない頭で日付を追う。けれどいくら考えても帰ってくるのは明日だったはずで。


なんでなんでなんで!?
それしか思えなくて、混乱する。


けれどぎゅっ、と力強いようで、優しく回された腕とその体温があまりにも久しぶりで、心地良いものだから。



(帰って、来たんですね…)



少ししたら落ち着いてきて、彼が地方調査からやっと帰ってきたのだと理解した。



(本当に、久しぶりだわ…)



少しだけ疲れが見えるけれど、なんだか幸せそうに微笑む彼の顔をじっとみる。



彼がここにいる。
そう感じたらなんだか、ぶわっ、と今まで溜め込んでいた感情が溢れそうになった。



―――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――…




『夕鈴、』


それはそれは言いにくそうに、彼は出発の前夜、告げてきた。



『あのさ、明日から地方調査でしばらく王宮を空けなくちゃいけなくなっちゃったんだよね、』



その突然な報告に驚きつつも、そうなんですかーと返す。仕事のことだし、急に決まったのかしらとその程度しかこのときは思ってなどいなくて。



『それでね、その空けるっていうのが、』



2週間なんだよね、と陛下に告げられたときにふっと、"2週間も?"と思っている自分に驚いた。

その事実にすごく何故か焦って、陛下に知られたくなくて。


だって、目の前の彼はそうでなくても行きたくないよー、離れたくないよー、と見るからに出発するのを嫌がっているようだったから。


私がそう思ったなんて知った途端に、"じゃぁ、止めようかな"なんて言う彼が頭を過る。


李順さんが静かに怒り、自分を睨む姿も…。
まずい、それは本気で避けなければ。



(こういう時にこそしっかりするのよ夕鈴!!)




自身が抱いた違和感などでたくさんの人を煩わせるわけにはいかないと、その思いが自身の中を締めて。

正妃として、きちんと見送らなければとの、義務感にもかられた。



『夕鈴?』



ふときづくと黙りこんでしまった私を心配そうに覗き混んでいる陛下に、



(言わなければ。)



気がつくとその思いから、諭していた。


そしてそれに驚きながらも私の肌に触れようとする彼の手も振り払い、諦めさせるために背も向けて。


明日が出立なら今日くらいは体を休めて欲しかった。


その日はそのあと強く陛下が後ろから抱き締めてきた、その腕の中で。これから初めて離れる数日間の不安と、彼を背に感じながら目を閉じて、夢の中へと落ちていった。




――――――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――



(はぁ―――――…)



陛下を見送ってから、1週間と5日目。
それはもう思っていた以上に、辛いものだった。



(後、今日を除いて2日…)



2日、たったの2日。頭ではあっという間だとわかっているのに。それなのに、




(陛下は元気かしら…、怪我なんてしていないといいのだけれど…)




気がつくと彼を想っている自分がいて。




はぁ――――――…



自然と何度目になるか分からないため息がもれた。すると近くで、そわそわと侍女が心配そうに伺っているのを感じる。



(分かっている。分かっているのに。)



始めはもれてしまったため息にあまりにも侍女が気を配るものだから、気を付けていたのだけれど。




(ごめんなさい、)




自分でも予想以上に限界で。




『夕鈴―――――…』



自分を呼ぶ彼の声や彼の面影を探してしまう自分に苦笑する。



(結局、掃除もあまりできなかったし…)



つい数日前の老師とのやり取りを思い出す。



初日こそ、それは集中して1日で終わらせてしまうくらいの勢いだったのに、



『お前さんも、なんだかんだ言って陛下が恋しいのじゃのー』



日に日にぼー、っと動きを止め、考え込んでしまうのが増えていく私に何を思ったのか老師が呟いて。


あまりにも突然に、しかもそんな思ってもいなかった言葉にもちろん必死で否定したけれど。真っ赤に染まって、しかも仕事放棄を見られていたのもあり、



『隠すな隠すな。分かっておる。初めて陛下とこんなにも離れたのじゃ。お前さん自身もそれがどういうことか日に日に感じて、その想いに惑っておるのじゃろう。』




ずばり当てられて、言葉に声を失う。



『まぁ、少し意外だったがのぉ。お前さんも鈍感ではあるがきちんとおなごの心を持っていたわけじゃ。陛下はそんなお前さんを知ったらお喜びになるだろうなぁ。』




お帰りになられた時が楽しみじゃ。お世継ぎお世継ぎと小躍りしながらはやし立てる老師になにも言えず、その場を後にしたのはいつだったか。


それからは老師が来なくともよい。陛下への想いを募らせ、陛下に慰めてもらうとよいわ、となんだか訳の分からないことを言っていたので、その言葉に甘えていたのだったけれど。



(恋しい、かぁ…)



あれから老師の言葉が耳に残り、つい考えてしまう。

そんなしをらしい感情を自分が持つだなんて。



(でも、)




日に日に強まる想いにそれはすとんと、はまった。


会えなくて、寂しい。
恋しい、陛下が。



はぁ――――――――――…



またこぼれるため息に、辛さが増した。




(今日も、あと寝るだけ。あとたった2日だわ。)



泣きそうになるのをふんっ、と振り切っていつものように床につこうとしたその時、




「あの、少しよろしいでしょうか…?」



振り向くと普段よく、自身を手伝ってくれる侍女を先頭に、陛下付きの侍女まで数名が少し不安げに立っていた。



「どう、したの?こんな時間に…」



陛下付きの侍女まで表れた異様な光景に、陛下に何かあったのかと嫌な予感が過る。



「これをお妃様に、お渡ししたくて…」




けれど、そんな不安を他所に、侍女たちはそっとある布を差し出した。



「これは…?」



そっと受け取ると、なんだか懐かしい感じがして胸がとくん動く。



「陛下の、お召し物ですわ…」

「お妃様が陛下の不在中、あまりにもお寂しそうで、」

「私たち考えましたの、」

「せめて、陛下の身につけるものでそのお心をお慰め出来ないかと、…」




(陛下の、上衣…)


侍女たちの想いと、久しぶりに香るその懐かしくなった匂いにツンとして涙がでそうになった。


「お、お妃様!?」



そんな私に彼女たちは、やっぱり差し出がましいことをしたと慌てていて、



「ごめんなさいね。違うのよ、」



泣きそうになるのをのをこらえ、彼女たちに少しだけ微笑む。



「あなたたちの気持ちが嬉しくて…。」



本当に嬉しい。正式に正妃となるときに、身分は明かしたはずなのに変わらずこんな私に心をくだいてくれることが。



「このところ、心配をかけてごめんなさい。けれど、もう大丈夫よ?あと2日だもの。」




ありがとう、と今度ははっきりと笑いかけた。






それからしばらくして。
なんだか目に涙を浮かべた彼女たちを帰し、寝台に入る。


何となく、気恥ずかしかったけれど、寂しさから陛下の上衣を胸に抱いて。


陛下が出発してから寝付きの悪かった夜も、この日はすんなりと眠る事ができそうだ。



(大丈夫…。)



陛下が帰ってきたときは、一番の笑顔で迎えるの。
恥ずかしくて、出来るかわからないけれど、めいいっぱい腕を広げて、たまには抱きついてみたい。



(驚くだろうな、陛下)



想像したらなんだか楽しくなって、そうするうちに眠りについていた。






――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――…



未だ眠り続ける彼を見続けて、数分。

今日までの離れていた日々を振り返り、鼻がツンとした。


久しぶりの陛下。
愛しい、人。


眠る前に考えていた、お出迎えは出来なかったけれど。


ぎゅっ、と抱き締めているその人に自分もそっと腕を回し、抱きつく。



(陛下、おかえりなさい。)



起きたら、もう一度笑って、ぎこちなくでも抱きついて、そう告げよう。



そう決めたそれに、私は微笑みながらも再び目を閉じた。






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テーマ:二次創作:小説
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