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ため息

2011.11.09 01:47|狼陛下の花嫁 ss
*狼陛下(黎翔×夕鈴)
*ss 3


今回は"足りない"の李順視点です。後日談も少し含みますのでよろしければどうぞ*゚
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ここ数年前から、私の日常は苦悩と苦労だらけのように感じる。


はぁ――…


今日も始まったばかりだと言うのに。目の前の様子につかずにはいられないため息がもれた。



「そんなところで何をしているのです?」



朝政の為、政務室へ向かう通路の一郭。私はそこで柱から見え隠れする人影に問いかけた。

柱にしがみつき、明らかに挙動不審なその人物は私の声にびくっ、と驚き物凄い勢いで振り返る。



「り、りりりりりり李順さんっっ!」



まだ早朝だというのに、彼女には不調な時と言うものがないのだろうか。あまりにも元気な声に私は思わず顔をしかめた。



「朝から何事ですか、夕鈴殿。」



不愉快極まりないという顔で彼女を見る。すると目の前の人物は「すみません」と、それは分かりやすく、落ち込んだ。

上質ではあるが、細工や飾りの少なく、華やかとは言い難い衣装。さっと結い上げ、手のかかりは感じられない髪には、きらびやかな簪のかわりに早朝に宮廷の庭でよく見かける花がさされている。

下手をしたらそこらにいるの女官か、宮廷入りを許された商人にも間違えられそうな装いの彼女。だが、これでもれっきとした妃である。質素倹約は誉めるべきことだ。が、


(…これが正妃とは嘆かわしい。)



本日二度目のため息をつく。


つい一年ほと前だろうか。バイトでやとった偽物の妃が本物になったのは。思い出したくもないあの場面が頭を過る。


『我慢できなくて手、出しちゃた。だから夕鈴を本物のお嫁さんにするねー』



と、会って早々、まるで挨拶をするようににこにこと言われたことを。その瞬間、私は声を失うどころか、我も失ってしまい、


気がついたら、すでに身分が低い彼女を陛下が正妃までさらりと実行してしまった後でした。なんて過去最悪の失態を犯した出来事だ。


(あれほどやっかいな家臣が居るなか、どうやって彼女をその位置に置けたのか…)



未だにそれは分からず仕舞いだ。狼の獲物への執着はなんと恐ろしいものだと強く思い知らされる。そんなことを考えていると、



「り、李順さん?」



急に黙りこんだ私を不振に思ったのか、その花嫁のびくびくと私を呼ぶ声が耳に入った。



(まったく、正妃が陛下の側近にびくつくなど、)




急にこちらに意識が戻り、彼女に言うはずであった言葉を思い出す。



「夕鈴殿。」



びくっ。
名を呼ぶだけでまた彼女は身体を震わせる。…何がそんなに恐ろしいのか。バイト時代に散々、給料を盾に脅したおしたことはすっかり頭にはない。



「正妃とあろうものがそれほどあからさまにいち家臣に臆することがあってはなりません。ましてやこんな人目のつく場所で女官も付けず、しかも柱にしがみつくなど…言語道断です!」



いきなり、有無の言わせない勢いで説教をし始めた李順に夕鈴は目を丸くして固まった。



「それに、この時間はまだいつもなら起床まえでしょう。」


「そ、それはっ…」


何を朝っぱらから、こんなところで、あんなことを?言葉に出さずとも伝わる勢いで向けられた視線に今度は視線を泳がしもじもじと手をまごつかした。



はぁ――…



彼女がこのような行動を取るときは大方きまっている。嫌な予感が頭をめぐって、私は頭が痛くなった。



「貴方が何を悩もうが、何をしようが構いませんが…。」


びくっ、



「正妃として、恥ずかしい行動は慎むように!」

「は、はいっ!」

「そして…頼みますから陛下を不機嫌にさせないでください。」

「…うっ、」



(やはり、陛下絡みですか…)


素直な彼女はその言葉には頷かず、言葉を濁した。



「"うっ"ではありません。正妃として一番重要なことですよ。いいですねっ!」

「はいぃぃぃぃぃっ―――!!」

「では、後宮に戻ってください。」



私の切実な、必死の迫力に押され、もはや悲鳴のように返事をした彼女は逃げるように後宮へ戻っていった。



はぁ――…



その背を見守りながら、そっとまたため息をつく。もし彼女の反応がかの人へ繋がるものであったのなら…。



これからが本当の苦悩の始まりだ。




――――――――――――――――――
―――――――――――…




「下らん話をするなと、あれほど申した私の言葉が理解出来なかったか?」



冷ややかな声が政務室に広がる。

ごくり、家臣らが息をのむのすら聴こえてしまうような辛辣な雰囲気に誰もが怯えきっていた。



(やはり、嫌な予感があたってしまったか…)



誰もが口を結び次に陛下から告げられる言葉を恐れるなか、一人私は思っていた最悪の事態に心中でため息をついた。



「何度言い聞かせようと、理解出来ぬその頭…一度切り開いてみるか?―――…少しはましになるかもしれん―――」



さて、誰からいくか…
すっ、と目を細め、陛下が薄く笑う。



(まったく、当たりたくもない予感ほど当たるなど…それも…)



今朝のびくつく彼女を思い出す。

今にも剣を握り、ふるい落しかねないその様子に、終に全員(方淵を除いて)が凍り付いたとき、




「…恐れながら―――…」



私は見かねて、なんとか場を押さえたのだった。





―――――――――――――――――
――――――――――――…




そろそろ宮中のものが床につくだろう時間帯。私は陛下と二人で手元にあった案件を片付けていた。



(やはり、彼女絡みですか…)



いつもなら後日に回してしまう案件をひたすら済ましていく陛下に、私の不安は確信になる。嫌な事や、逃れたいことがあると仕事にかかるその癖はいつまても変わらないらしい。



(さて…こんな状態がいつまで続くことやら。)




朝政を思いだし、頭を抱えたくなる。あんなことが続いてしまうなんてことがあれば、氾水月でなくても出仕拒否をするものが出てきそうな始末だ。




(これもそれも、あの小娘がぁぁぁぁっ―――!)




内心これからの事態の収集とあの妃への怒りで大荒れになっていると、ほどなくして、陛下は限界が来たのか政務を放り出した。


苛ついていた私はいままで言えずたまっていた鬱憤を静かにぶつける。


けれど、そんなものは取り合うはずもなくさらりとかわされてしまう。陛下の頭のなかにはもはやあの正妃のことで他の事は入らないらしい。


いらいらいら。
正妃らしくない、何かと問題を引き起こす彼女と彼女のことになると耳をかさない陛下。苛々は頂点に達した。




「…そんなに彼女に会いたかったのなら、いくらでも会いに行く機会はあったでしょうに。」



少しぐらい責めても許されるだろう。



「何か夕鈴殿とあったのですか?」

「彼女もまた、明らかに態度がおかしかったものですから。」




夫婦の事だからと、今日まで私はなるべく触れずに対処してきた。が、こちらもこれだけ被害を被れば何故、このような事態になってしまったのか知る権利はあるだろう。


いつもいつも、彼女がまだバイトであったときから二人の間でのいざこざに聞いても知らされず、ここまできた。しかしいい加減、限界というものがある。



しかし、そんな私に陛下は返事をすることなく、最初こそむっとした様子だったが今は何か思案にふけているようだ。


かと思えばにやりと笑い、私に一言いうと早急に政務室を立ち去ろうとする。



「陛下!?」




今日こそは聞き出してやろうと思った私の思いも虚しくもはや彼女のことで満たされた陛下だ。止めることも、聞き出すことも叶わず、一人私は政務室に残されてしまった。







―――――――――――――――――
――――――――――――…




(またですか…)


昨日と同じ風景に私は、また同じくため息をつく。



「夕鈴殿。」



その声に彼女はまたもや凄い勢いで振り返る。

だが、その様子は昨日と異なり怒りに身体をふるわせていた。




「…今日はまた、どうしたのです?」



そんな彼女の様子に多少驚きつつも、滅多に怒りを他人に見せない彼女が心配になり、説教をのみ込み聞いてみる。



「―――っっ、どうしたも、こうしたもないですよっっ!!」



途端に爆発した彼女に、不覚にもかけ直そうと持ち上げた眼鏡を離してしまう。



「お、落ち着きなさい。ここは人目につきますよ。」



鼻に垂れ下がった眼鏡を直しつつ、なんとか彼女を落ち着かせようとする。



「もう限界なんです、李順さんっっ!!」



しかし、彼女の怒りは収まらないようで、その声は廊下中に響き渡ってしまっている。人が見当たらないのが唯一の救いだ。



はぁ――…



本日二度目のため息がもれる。


「ゆう「夕鈴」



手や頭をばたつかせ、怒りを露にする正妃を直ぐに制することを諦め、何があったのか聞き出そうとしたそのとき、スッ、と低くよく通る声が脇からはいる。



その声にびくっっ、とそれはそれは身体を震わせた正妃は自身の後ろを振り返った。



「私のもとから消えてしまったと探しに来てみたら…こんな早朝から私の側近と会瀬とは…」



びくっっ、
またもや彼女は震える。



「これは、君は誰のものであるのかまた教え込まなければならんな…。」



(明らかに、面白がっている。)



陛下はじりじりとどこか楽しげに近づいていく。だがそこで捕らえられる彼女ではない。



「近づかないでくださいっ!もう、今度は本気の本気で顔も見たくもありませんっ!!」



今日の彼女は狼にも臆することなくキッ、と陛下を睨みつける。


…正妃の怒りは本気らしい。



(このままではまた昨日と同じ惨事が…)



進まない政務、不機嫌な陛下、怯え出仕拒否をしはじめる家臣…最悪の場面がぐるぐると頭を巡り始める。



(なんとか、なんとかしなければ、)



何故、ただの側近がこんな夫婦の喧嘩に悩まなくてはならないのか、そんなことも思ったが今は最悪の事態を回避することが先決だ。



「夕鈴殿、おち――…」



ついて下さい、と続けようとした言葉を思わずのみ込む。




「―――んんっ!?」



…陛下が素早く彼女を捕らえ、その騒ぎ立てる口を塞いでいた。



「―……んっ、はっ―……!」



それほど長くはなくすぐに離れたそれ。
だが急に訪れた口づけに彼女は息を荒くした。



「へいっ「許さぬ」



息を整えた彼女が反撃に出ようとしたその時、陛下がまたもやそれを防ぐ。そして陛下の有無を言わせない空気が廊下に流れはじめた。



「言っただろう?」



「私は君が足りぬ。」


つー…
陛下の手か彼女の頭部から頬へ伝う。


二人からかもし出される空気はもはや朝のものではない。



「怒る姿も、その愛らしい口で責める君の声も、全てが愛しくてたまらない…。が、―――――…」



そっと陛下はその顔を彼女の耳に寄せた。

何か囁かれたのか。その瞬間、彼女は火を吹くのではないかと思われるくらい顔を紅く染めた。



そしてがくっ、と腰を抜かす正妃を陛下は慣れたようにそっと腕に抱き上げた。



それにぱくぱくと何か反論しようとしているのか、彼女は口を動かしたがそれは声とならなかった。


そんな彼女を良いことに楽しそうに陛下は笑い、抱えたまま歩き出す。



「李順。」




あまりの出来事に開いた口がふさがらないでいる私に突然陛下が呼びかけた。

どうやら私の存在は認識していたらしい。



「は、はい。」


慌てて返事をする。


「半刻ほどまて。…すぐに戻る。」



そう告げると陛下は政務室とは真逆の方向に足を進めていく。…彼女を抱えたまま。



「へ、陛下っ!」



それは困る、昨日の審議がたまっているのだ。

だが、そんな必死な側近の願いは本日も届くことなく、二人はその奥へと消えていった。



はぁ――…



一人残された長く、静かな廊下にため息広がる。




(これも…彼女と陛下を結びつけてしまった私の責任か…)



今日も私の苦悩と苦労は絶えない。それは恐らく、私が二人から離れなければのがれることのない、私の日常なのだろう。







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狼陛下ss 第3段です。今回は"足りない"にそわせた李順視点でのお話にしてみたのですが、いかがでしたでしょうか>
さらっと、短めにまとめるつもりがまたもや長文に…。はたしてこれはssと言えるのだろうかとこのところ疑問なうさこです。

今回のお話ですが、"足りない"を書いていた時に、どうしても李順視点が頭にめぐりにめぐってつい書いてしまいました~。私の中の李順さんはこんな感じです^^(笑) 基本、夕鈴や陛下を諌めることの出来る立場にはいますが、やっぱり最終的には二人にふりまわされて、常に苛々、心労が絶えない人かなぁ、それでくそぅ!!だなんて一人ごちてるとなんか可愛いじゃないか← だなんて妄想に妄想を積んで積んで重ねて重ねて出来ました^^

今回の李順さんはとても空回り(?)というか、ふたりに振り回され過ぎて、本誌のような頭のきれるようすは微塵もなかったのですが、何だかかんだふたりの一番の理解者で見方であり、ふたりの関係をそっと見守る、時には親のような、兄のような存在みたいだなと勝手に思っております。それはそれは頼もしい李順さん!大好きです!

いつかそんな李順さんも書いてみたいものです^^

そしてそして。最後の陛下が夕鈴に囁いた台詞ですが…はなんでしょうか^^?夕鈴の最大の怒りも納めてしまうほどの台詞…恐るべし狼陛下! ご自由に想像しちゃってくださいね*゜


そして、最後になりましたが、拍手を頂き、こんな文章でも読んで頂けるこころのお優しい方がいらっしゃったのだととてもとてもびっくりで、嬉しかったです(´;ω;`)

しかもコメントまで…感激です(T_T)お返事は後日にまた改めてじっくりとこちらでさせていただきます!

すごく励みになりました。
ありがとうございます○゜


こんな私の藜翔と夕鈴のお話ですが暖かい目で読んで頂けると幸いです。

では。


2011.11.9

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テーマ:二次創作:小説
ジャンル:小説・文学

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